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| 「ボケ防止にも役に立ってるね、マジックは」と笑う日下部さん |
40年以上続けてきた家業のうどん店を3年半前に廃業し、現在は悠々自適の暮らし。趣味のマジックを練習するうちに、幼稚園や敬老会などから声がかかるようになり、1ヵ月に2〜3回はボランティアでマジックを披露している。今月は、手品で地域の人たちを楽しませる、日下部守一さんを紹介しよう。
「うどん屋を営んでいたころから、お客さんの前でちょこちょこハンカチの手品をやっては、びっくりさせとったからね」といたずらっぽく語る日下部さん。ハンカチの手品とは、握った手の親指と人差し指の中にハンカチをどんどん押し込んでいって、パッと手を開くとハンカチは影も形もない。再び手をにぎりもう一度開くと、消えていたハンカチが戻っているという、だれもが一度は見たことのあるあの技である。
取材に伺った時も披露してもらったが、タネがわかっていてもその鮮やかな手さばきに、つい引き込まれ、不思議な気持になるものだ。
「そうでしょ。このハンカチマジックは、どこへ行ってもウケるんだよ。これでみなさんが楽しんでくれるもんだから、それだったらもっと上手になって、いろんな手品を覚えてみようかなと思って本格的に習い始めたわけだね」
うどん店経営を退き、自由に使える時間も増えた。複数の文化教室に通い、技のレパートリーを増やしてきたという。
「レパートリーの数?そうだね、数えたことはないけど、細かい技も含めれば、百通りくらいにはなるんじゃないかな?」
「百聞は一見にしかずだからね。まず見てもらおうかな」と日下部さんは、さまざまな手品を見せてくれた。
二重にしたロープに通した輪っかをあっけなくはずしてしまったり、切ったはずのロープがいつの間にかつながっていたりと、目の前でどんなに注意深く見ていても、からくりがわからない。
「えっ、なんで?」と思わず驚きを口にすると、日下部さん、にっこり笑ってこう言った。
「マジックですから」
確かにマジックである。
こうして人を楽しませるために、日下部さんは、道具も自分流に工夫して手作りしているそうだ。
例えば、赤い大きな木箱。これは「宝のマジックボックス」といって、幼稚園では大人気。
「『タネも仕かけもありません』と言って中の引き出しをまず見せるでしょ。で、もう一度引き出しを引くと、ミッキーのぬいぐるみや時計など、子どもたちが喜ぶものがいっぱい出てくるという趣向です」
本当に出てくるわ出てくるわ、引き出しを開けるたびにわんさかいろんなおもちゃが出てくるのには驚きである。
また別の鍵付きの木箱を使って、観客が身につけている指輪などの貴重品を拝借。これをいったん箱の中に入れて消してしまう。それが、ちょっと離れたところにある食パンの中から出てくるという、大技も見せてくれた。
この五月には通っている教室の仲間とともに、中国へ「マジック友好の旅」にも出かけた日下部さん。
「上海の野外ステージでやってたら、ちょうど結婚式場から出てきた新婚さんが通りかかかってね。ちょっと手伝ってもらえませんかと声をかけたら、OKしてくれたもんでね、ステージに上げちゃったの。『愛のきずな』というマジックを一緒にやりました」
「愛のきずな」とは、まず、新婚さんに数枚のハンカチを渡し、ロープにしっかりと結びつけてもらい、それぞれロープの両端を持ってもらう。そして日下部さんが「口上」を述べる。
「ロープにくっつけたハンカチを、二人にとっての過去のさまざまな出来事に見立ててね、それらを全部落として、幸せな新生活をスタートさせましょうという内容のことを言うんですわ」
で、日下部さんが「ハイ」とマジックをかけると、ロープにしっかりと結びつけてあったはずのものがすべて地面に落ちるという仕かけだ。ロープに掛けるものは、ハンカチだけでなく、ハンドバッグなど身につけているものでもいいそうだ。
最後はロープの端をおたがいに手繰り寄せて近づき、しっかりと抱き合ってもらい、めでためでたしという演出。結婚式でも時々披露し、大いに盛り上がる芸だ。
「ストーリー性を持たせて、流れのあるマジックを目指したいと思っています。それには技だけじゃなく、話芸やジェスチャーも磨いていかんとね」
今月初めには木曽川町の病院でもマジックを披露し、病気の人たちを笑わせ、勇気づけた。見たいと言ってくれる人がいれば、どこへでも駆けつけ、マジックの楽しさを共有したいと考える日下部さんだ。