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| 「自然は飽きない。つきあうと面白い発見がいっぱいです」と川口さん |
今回紹介する川口邦彦さんは、小中学校での自然環境に関する授業や環境問題を学ぶ市民講座などからひっぱりだこの「環境おじさん」だ。豊富な経験から紡ぎ出される楽しい話と体験中心の講座がわかりやすいと評判を呼び、頼まれればどこにでも気軽に出かけていく。2級ビオトープ管理士(※)の資格も持つ川口さんの多岐にわたる活動を伺った。
子どものころから、とにかく生き物が大好き。カブトムシやクワガタ、トンボなど、川口さんが子どものころは町の中にでも、小さな生き物たちがたくさん生息していたという。
「樹木の名前も知らなかったけれど、クヌギはカブトの木、エノキはタマムシの木と呼んでいたんです。どの木にどんな昆虫がすんでいるのか、ちゃんと知っていたんですね」自然の中で毎日のように遊んでいたので、生き物にとって植物は絶対必要なものだということも経験的に理解していたそうだ。
そんな川口さんだったが、生き物が好きだからといって、それで生計を立てられるなど思いもよらなかった。学校を卒業後は就職し、脱サラ。その後は姉の経営する飲食店でシェフとして働いていたという。
自然環境をテーマにした仕事に入るきっかけとなったのは、子どもたちが生まれてから。三人の息子さんたちが幼稚園や小学生になり、虫捕りに目覚めたころだったという。
「昔とったなんとやらで、ここは一つ、カッコイイお父さんを見せてやろうと張り切って出かけていったんですわ」
ところが、捕虫網も虫かごも万全の体制でのぞんだにもかかわらず、虫たちの姿が見られなかったという。
時代はまさにバブル全盛期。経済優先の土地開発は都市部だけでなく郊外にも及び、小さな生き物たちの居場所がどんどんなくなっていった時期だ。
「私自身、仕事で疲れて、休みの日はパチンコしてあとはゴロ寝みたいな生活に疑問を持っていたので、思い切ってコックの仕事を辞め、自然を守ることをテーマに仕事にしていこうと決めました」
ちょうどそのころ、自宅の庭に池を作り、自分なりに工夫したビオトープを作ったことがきっかけで、学校から「ビオトープを作ってくれないか」という依頼が舞い込んだ。
「最初はまったくの我流で、ただ体験で得た知識だけで環境づくりに取り組んでいたのですが、2級ビオトープ管理士の資格も取り、だんだんに教える立場に変わっていったんですね」
地球温暖化が深刻化し、危機感が高まる中で、川口さんは「環境のプロとしてメシの食える人」がもっとたくさん出てくるべきだと考えている。
「人間の営みはすべて自然と深くつながっています。経済も食料もゴミの問題もすべて自然を無視したところでは語れません。自然を守るということはつまり、人間を守るということなんです」
なぜ自然を大切にしなくてはいけないか。その意味を次世代を担う子どもたちに伝えていく役割の人が、本当はもっとたくさんいなくてはいけないというのが川口さんの持論。NPO法人「トンボと水辺環境研究所」を立ち上げたのもそうした思いの表れだろう。
川口さんの授業は、実際に山や森、川辺に足を運び、そこで自然と向き合いながら学ぶことが中心なので、だれにも興味が持てて人気が高い。
「例えばね、トチカガミという浮葉植物は葉の裏側に浮き袋が付いています。水に浮かぶために長い時間をかけてそのように進化したわけですが、今のトチカガミはこの浮き袋をプチッと手でつぶしても、ちゃんと水に浮かんでいるんですよ」
つまり浮き袋なしでもやっていけるようにさらに進化しているというわけだ。
「植物って、本当に面白いんですよ。それぞれが工夫して生きてるわけです。そうした身近な場所の身近な発見を体験してもらえたらうれしいですね」
またこんなエピソードも紹介してくれた。
「野草は、毒のあるもの以外ならたいていおいしく食べられるんですよ。で、ある講座でクローバーをソテーして食べてみたら、これがもう固くて固くて食べられたもんじゃなかった(笑)」
そんな失敗も、みんなが面白話として話のタネにしてくれたら、それでもう自然への関心が一歩深まると川口さんは考えている。
「トンボと水辺環境研究所」では、学校向けの自然環境講座以外にも、もう一つ大きな仕事に取り組んでいる。それは五条川の生き物調査と川づくりだ。
「もう取り組んで4年になりますが、定期的にデータをとりながら、生き物が集まるための川づくりも進めています。始めて4年になりますが、本来生息していた生き物たちが徐々に戻ってきていますよ」
生き物も植物も大好きな川口さんは、自然を守っていこうという情熱はだれにも負けないつもりだ。
「お金も体力もないけれど、人脈と情熱が私の財産。生涯を通じて夢中になれる仕事を見つけられて幸せです」と自信を持って語る。
もし生態系や環境について学びたいという人がいれば、どこへでも出かけて話をするという。
「たとえ1人だろうと、100人だろうと、お話することは同じですから。自然を守るということに興味のある方は気軽に声をかけてください」とのことだ。