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味のある店2008年6月号・73号 - 人を訪ねる
(株)カネスエ 代表取締役社長  牛田 彰 さん
「食を考えることは、つまり生き方を考えることなんですね」と牛田さん
「食を考えることは、つまり生き方を考えることなんですね」と牛田さん

生産者と消費者を
つなぐ
食のステーション
でありたい

 食品スーパー「カネスエ」の代表取締役社長である牛田さんは、5年前にオーガニック食品店「旬楽膳」をオープン。食と健康をテーマに、よりおいしくて安全な商品を提供し続けてきた。食の安全が求められるいま、食品スーパーとしての責任を果たしていくには、どんな取り組みをすればいいのか。経営者でありながら、生産者、消費者の視点をも大切にする牛田さんは新たな活動に挑戦している。

きっかけは、志を持った人との出会い

 食品スーパーの経営者として、「健康な暮らしに貢献できる、安全でおいしい食品を提供したい」という思いは常に持っているという牛田さん。スーパーマーケット発祥の地アメリカにも足を運び、何度かオーガニックスーパーの視察もしたという。
 「やはりアメリカは多様なんですね。消費者の選択肢がたくさんあります」
 豊かになったとはいえ、日本はまだ消費者のライフスタイルに合わせて自由に選択するという域には達していないと実感した。価格の安さだけを追及するのではなく、有機肥料を使った米や野菜、添加物を使わない加工食品など、体に良くておいしい商品を展開していく方法はないものかと思案する日々。そんな折に、群馬県で有機農業に取り組んでいる生産者と運命的な出会いがあった。
 「その方は大企業のエリートサラリーマンだったのですが、思うところがあったのでしょう。お子さんのアトピーもきっかけになったと言っていましたが、すっぱり企業を退職し、大規模有機農業に着手し始めたところでした」
 有機農業を日本に広めようとする生産者と食品スーパーの経営者。お互い立場は違っても、新しい方法で活路を切り開いていこうという思いは同じだった。
 「群馬には何度も通いました。本音で話し合い、議論に議論を重ねたもんです」
 ようやく、牛田さんの構想するオーガニックスーパー「旬楽膳」に、有機野菜を供給できるめどが立ち始めたころ、なんとその生産者は病に倒れ、亡くなってしまったという。
 「ショックでした。でも彼の意思を継いでがんばろうという仲間が全国にたくさんいましてね。そういう人たちとの出会いも私には大きな財産となっています」
 今では、百軒以上の有機農業生産者との関係を築き、野菜の供給をしてもらっているそうだ。

野菜の消費量を増やそう

 オープンして5年め。「旬楽膳」は地域の人たちに「体に良くておいしいスーパー」として定着し、一昨年には名古屋市名東区に2号店もオープンした。しかし、もっともっと健康な食生活を広めていかなければと牛田さんは考えている。
 「昔に比べ、日本人は野菜を食べなくなっています。多彩な食材が手に入るので、その分野菜の消費量が減るのは仕方ないことかもしれませんが、旬の野菜は本当においしいものです。そのことを子どもたちにも舌と胃袋で感じてほしいですね」
 本来、冬にトマトやキュウリがあったり、夏にハクサイがとれるということは不自然なことなのだが、スーパーには季節を問わずきれいな野菜が並んでいる。そんな状態に慣れっこになってしまっている現代人に、「季節の野菜を食べよう」というメッセージを送っていくことも牛田さんの今後の課題だ。
 そうした活動の一環として、旬楽膳には野菜料理を中心としたバイキングレストランも併設し、多彩な調理法でおいしいランチを提供している。また体にやさしい健康的な食生活や昔ながらの食文化を紹介する情報紙を発行するなど、地道な努力も続けている。
 「私自身、8年前に病に倒れましてね。それ以来なるべく野菜中心の食事を心がけています」
 といっても、ムリはいけないと言う。継続できなければ意味がないので、我慢はせず、楽しく生活しながら、健康的な食生活を工夫することが大切だ。
 木曽川沿いに畑を借り、自ら野菜づくりに挑戦したこともある牛田さんは、「ミネラルをたくさん含んだ野菜は体を元気にする」と実感した。野菜の力を信じ、今後もより多くの生産者と知り合い、日本の風土に合ったおいしい季節の野菜を流通させていきたいと考えている。

食を通じて、人も社会も健康に

 「ほんの40〜50年前までは、生産者と消費者は同じだった。それが都市に出て働く人が多くなり、作る側と消費する側が切り離されてしまったんですね」
 日本の食料自給率は現在40%にも届いてない。世の中にいくらモノがあふれているといっても、このままでは本当の意味で豊かな時代はやってこないというのが牛田さんの見解。
 日本には古くから、人の身体はその土地でできた食べ物と切っても切り離せない関係にあるという「身土不二」の考え方がある。そうした考え方に沿った自然な暮らしを提唱するとともに「生産者と消費者をつなぐステーション」として旬楽膳が役に立てばと考えている。
 作る側の立場に立つことで安定的に生産できるサポートをする。その一方で消費者の立場で、どんな商品を供給していけばいいのかを工夫する。そして食を通じて健康な社会づくりに貢献する。これが牛田さんのスタンスなのだ。

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