今年で開園70周年を迎える名古屋市千種区の「東山動植物園」。休日には親子連れなどでにぎわう、この動植物園の一画に一両のSL(蒸気機関車)が展示されている。
外見的にはありふれたSLだが、このSL「C6217」こそ、今から53年前、狭軌(線路の幅が狭い)鉄道用としての世界最高速を記録した歴史的なSLなのである。
C6217が世界最高速を記録したのは昭和29(1954)年12月15日。場所は愛知県と岐阜県を結ぶ東海道本線の木曽川橋梁上であった。
木曽川橋梁は東海道本線開通以来、何十年と使われきた古い構造の大鉄橋。そのため今後の「電化」や「スピードアップ」「輸送量の増加」など、予想される事態に鉄橋が耐えられるかどうか、その強度を調べるための走行テストが行われた。
世界最高速記録は、この木曽川橋梁の耐久力を試す際の、いわば副産物として偶然生まれたのである。機関車の性能テストなどのために、速度を上げて記録されたものではなかった。
記録された速度は、時速129キロ。当時としては驚異的なスピードであった。C6217の総重量は約130トン。その巨体が橋の上を疾走した際に出されたもので、これが狭軌用SLとしての世界最高速記録となった。大半のSLが姿を消した今となっては、この記録が塗り替えられることはもうないと思われる。
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| 木曽川橋梁上での時速120キロの走行試験。この時、時速129キロという世界最高記録を出した |
C6217は、昭和25年8月に名古屋機関区に配属されている。以来、昭和30年7月に梅小路機関区に転出するまで、東海道本線の「つばめ」や「はと」「さくら」などの特急列車用として使用されており、この地方ではおなじみのSLだった。
C6217を含むC62型は、昭和23年から24年にかけて約50両が製造されている。東海道本線のほか、山陽本線、常磐線、東北本線などの長距離特急用として活躍したという。
なお、C6217はその後、昭和45年9月に糸崎機関区を最後に引退。使用停止になるまでの運転キロ数は約257万キロ。これはC62型としての最高記録となっている。