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| 「作るだけでなく、販売する気も満々です(笑)。興味をお持ちの方はお気軽にお問い合わせくださいね」と細江さん |
廃工場を利用した工房「ての仕事」では、金属作家の細江まり子さんが、銅や真鍮(しんちゅう)など、さまざまな金属に囲まれながら、幸せそうに作品を作っている。金属との出合い、金属との関係を尋ねてみた。
「金属との最初の出合いは、15年ほど前。そのころは、5時にきちんと終われるOLの仕事をしていて、結構優雅に暮らしていたんですよ(笑)。仕事が終わるとカルチャーセンターに通い、彫金を学んでいました」と語る細江さんは、当時からモノ作りが大好きであったという。
「ある日、ふと気がついたことがあったんです。それは自分が本当に欲しいものや買いたいものって、売ってないんだということ」
それならば、欲しいと思うものを提供する側になろうと思い立ち、OLから作り手へと転身。
「OLの仕事も大好きでしたので、自分に無理のないように、ゆるやかに方向転換していきました」
とはいうものの、金属に関する専門知識があるわけでもなく、人脈もない。どのように進んでいいのか迷っている時に、金属造形作家である佐野敏朗氏の作品に出合った。
「もう、ガーンときまして、絶対この人のところで修業させてもらおうと思いました」
知人のつてで、幸運にも佐野氏のもとに弟子入りできた細江さんは、そこで金属に関する知識や技術を一から勉強。現在も週に一度のペースで通っているという。
金属造形の世界では、作家はまず道具作りから始めなければならない。
「例えば、トンカチ一つとっても、買ってきたままでは役に立たないんです。グラインダーで削って、ペーパーで磨いて、つるつるにしてから使うんですね」
「こんな道具が欲しい」と思っても、そのとおりのものは売ってないので、自分で工夫して作るしかないのだそうだ。
「本当に欲しいものは売っていない」とかつて抱いた思いをここで再び実感。どんな道具も手づくりしてやりくりしている師匠の姿を見て「モノ作りをめざす身として、まだまだ甘かった」ということを思い知ったという。
「でも師匠は、質問すればなんでも答えてくれますし、わからないと言えば、ていねいに教えてくれますので、私は本当にラッキー」という細江さん。よく言われる「弟子は師の技術を見て、盗んで覚える」的な昔ながらの師弟関係は一切なく、やりたいことはどんどん挑戦させてくれるので、作品作りも楽しいという。
「腕は一流、ハートは自由な師匠をアーティストとしても見習っていきたいですね」
真鍮のブローチ、ナベやおたまなどの銅製のキッチン用品、また照明器具や楽器など、細江さんの作品は、どれも見ていて楽しい気分になるものばかりだ。
「日々暮らしていて、自分が興味を持ったもの、アンテナにひっかかったものを作品づくりに反映しています」
現在は、音の出るものに興味があるという。昨年開催された「金属造形展」に出品した木琴ならぬ真鍮琴が好評で、訪れた多くの人が実際に音を鳴らしていったそうだ。
「みなさんに身近に感じてもらえる作品っていいなと思ったんです。今年はスリットドラムという数台でたたいて楽しむ民族楽器を作る予定です」
金属の持つしなやかさ、柔らかさに魅せられた細江さんの夢は、「女鍛冶屋」になること。
「炉に火が入る瞬間の緊張感が大好き。身も心もワクワクしてきます」
いつか、鍛冶屋の手仕事を披露するワークショップを開きたいと語る細江さんの目は、きらきら輝いていた。