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| 牧野勝廣さん |
はじめは遊びのつもりで描いた城の絵。それがアメリカへ行っていた娘さんや、ご自身の友人であった外国人たちの目にもとまって、なんと定年退職後、60歳を過ぎてから「CGイラストレーター」の名刺を持つようになった牧野勝廣さん。独自の画法とボールペンで城を描く牧野さんを訪ねた。
牧野さんが城の絵を描くことになったきっかけのひとつは、当時勤めていた外資系企業の会社で、同僚の女性が発したひとことだった。
「どういういきさつだったかは忘れてまったけど、とにかく鉛筆でなにげなく城の模写をしたんだわ。そしたら『牧野さんすごく上手だね』って褒められてね。それから少しずつ描くようになったなあ」
この会社に30年間勤務。定年退職を迎える少し前から、趣味で城の絵を描き始めたという牧野さん。商談に訪れる外国人に自作の絵をプレゼントしたり、アメリカへ行った娘さんに手渡したりして、ごく自然に“城絵画家”のステータスを確立していった。
「定年退職して自由になる時間ができたことと、遊びでパソコンをやっているうちに、パソコンを利用して絵を描く方法を思いついたんだわ」
その手法はこうだ。
まず日本各地にある城へ出向いて、デジタルカメラで自分がいちばん気に入ったアングルの城を撮る。次にこれをパソコン上で、モノクロへと変換。写真用のソフトなどを利用して、城のアウトラインを残す。さらに、これを印刷して、そこにボールペンを使って濃淡をつけていく。
「ボールペンは鉛筆と違ってごまかしがきかない。だから、その特性を最大限に生かす工夫も大事。例えば影になって暗いところ、壁でもこちらと側面では明るさが全然違うでしょう。そこをボールペンで丁寧に濃淡をつけていく。昔は全部手で描いていたので2週間はかかったけど、パソコンを使うようになってからは、大体2〜3日で完成するようになったね」
牧野さんによれば、日本全国に現存する城の数は90以上。
「そのうちの9割は、すでに行きました。北は松前城から南は沖縄の首里城まで。もちろん、まだ行ってないところはいくつもりだけど、最近忙しくなっちゃって、なかなか出かけとるヒマがないがね」
いろいろな理由で忙しい牧野さんだが、その理由のひとつはご自身の作品が全国各地の城で、絵葉書セットとして販売されているからだという。
「姫路城、大阪城、名古屋城、清須城、赤穂城、犬山城に岡山城ね。もうじき広島城でも発売になるけど、全国11の城で扱ってもらっているんです。ある城で発売すると、『ぜひ、うちでも』と声がかかる。おかげで日本城郭協会という団体にも知りあいができて、ちょうど、そこの関係で今、犬山の名古屋経済大学で、私の作品展をやっているんだわ」
牧野さんが忙しいという理由はほかにもある。さまざまな企業が自社の製品のラベルやパンフレットなどに、牧野さんの絵を使わせてもらいたいというケースだ。
「岡崎のみそや、全国各地の酒のラベル、それに名古屋の有名なホテルなどからも頼まれている。お城というのは、名実とも絵になるからね」
城の絵で“全国制覇”をめざす一方で、鉛筆による似顔絵にも挑戦。さらに今後は世界遺産も描いていきたいという牧野さん、64歳。定年を過ぎて、もう一仕事にトライする日々が続く。