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| 安田理奈さん |
4歳のときからピアノを始め、一貫して音楽にかかわりながら、大学は国立(くにたち)音楽大学の声楽科を卒業。その後、英国バロック音楽史の勉強もかねて英国へ留学。現在は英国と日本を行き来しながらも、日本の子どもたちに音楽の楽しさ、素晴らしさを教えていきたいという安田理奈さんを訪ねた。
小さいときから今にいたるまで、ずっと音楽のとりこだったと語る安田さん。高校時代にオーストラリアに留学して英語に堪能になったことと、英国のバロック音楽を本格的に勉強したかったというはっきりとした理由もあって、国立音楽大学の声楽科を卒業すると、迷うことなく英国へと留学することにした。
「トリニティー音楽大学大学院というところで、ピアノと声楽を専攻して3年。その後、英国バロック音楽史を学ぶためにロンドン大学大学院で、さらに2年間勉強してきました」
バロック音楽とは、17世紀初頭から18世紀中ごろまでの、ヘンデル、バッハ、ビバルディに代表されるヨーロッパ音楽をいうもので、その期間は、ルネサンス音楽時代の終了する1600年ごろからバッハの死去した1750年ごろまでの約150年間とすることが多い。
この時期の音楽はクラッシック音楽の形成期であると同時に、のちのベートーベンらに代表される古典派音楽以降とは異なる要素が多いことから、「古学」とも呼ばれている。(フリー百科辞典『ウィキペディア』より)
「バロック音楽といえばバッハ、ヘンデルが圧倒的に有名です。でも英国にもヘンリー・パーセルなど、当時、すばらしい音楽が生まれていたんです。それを勉強したいと思ったんですが、残念ながら日本には英国のバロック音楽を学ぶ場所がなかったんです」
安田さんによれば、日本ではバッハ以前のバロック音楽や英国などのバロック音楽については資料も少なく、やはりきちんと勉強するためにも留学する必要があったということだ。
日本での学生時代、安田さんはピアノ・声楽の両方を学び、また演奏会などにもしばしば出ていたが、テクニックもさることながら、表現力の面では、仲間に決して負けないと考えていたそうだ。つまり、表現に関する音楽的なセンスについては絶対ともいえる自信を持っていたという。
「ところが英国に行って、最初に指摘されたのが表現力のなさ。これには驚きました。自分ではかなりいいところまでいっていると思っているでしょ。でもむこうでは、『テクニックはいいけど、表現力がまだまだだね』って言われて。これは私だけじゃなくて、日本から音楽留学したみなさんに聞いてみると、そういう経験をした人たちがとっても多い。ほんとうに大きなギャップがあるみたいなんです」
技術的にはすぐれているけど、その人自身の表現力に乏しいとの指摘。こうした傾向は、ともすれば日本の画一的な教育の弊害として、よく言われることでもあるようだ。
今も一年のうち半年ほどを英国で過ごし、演奏会やバロック音楽史の勉強にも取り組むという安田さんだが、最近、日本で“教えたい”という希望が出てきた。
「音楽だけに限らず表現力を伸ばすには、やはり小さな子どもの時代から教えるのがいちばんだと思うんです。もちろん成人されてからでも学ぶことは同じですが、それでも小さい時に覚えた感覚とか感性、そういったものはきっと生涯、その人の中に残っていくと思います。感覚や感性を磨き、育てるといった意味で、自分がなにか役に立てたらと考えるようになったんです」
大学生のころから始まって、英国の留学先でも現地の子どもたちや日本人駐在員の子どもたちなどに、ピアノや声楽、ソルフェージュなどを教えてきた安田さん。これからは従来の教え方にプラスして、まず表現力を伸ばすことに力を注ぎたいという。
「音楽は文句なしに楽しむものだと思います。だから音楽にペケはないんです。あれがだめ、こうしちゃいけないじゃなくて、その人、その子ども一人ひとりの個性を見つけ、そこを伸ばしていくことが大切なんですね。技術に走るのとは違って、とっても手間がかかるし大変だとは思うんですが、それが少しずつでもできるようになっていけば、こんなに素晴らしいことはないと思うんです」
生徒たちに教えることに軸足を移しながらも、自らの演奏活動もキチンと続ける。もちろん音楽史の勉強も並行して進めていく考えだ。なぜなら「自分が勉強していないと教えられないですから」。
自ら勉強して気づいたこと、感じたことを反映させながら、生徒たちの表現力を育むいきいきとした教室を続けていこうと考えている安田さんだ。