月刊い〜ち(each)は愛知県一宮市全域(一部を除く)と稲沢市の一部の中日新聞に折り込まれる地域密着タブロイド型新聞。
月刊い〜ち
い〜ちいまむかし人を訪ねる味のある店プレゼントトップページへ
味のある店2006年8月号・51号 - 人を訪ねる
「一宮たなばた落語ランド」実行委員会
柴田竹朗さん
柴田竹朗さん
柴田竹朗さん

噺(はなし)の中の空間にひたったり、登場人物と出会ったりする気持ちのよさよ

 一宮名物、夏の七夕まつりに合わせて開催が始まったという「一宮たなばた落語ランド」。真夏の暑い暑〜いこの時期に、風情ある剱正(けんしょう)幼稚園の講堂で落語を聞く。粋じゃあないですか。今年で5回目を迎えるこの落語会を、その第1回目からずっと続けてきた柴田竹朗さんの話をうかがった。

きっかけは高校の卒業生を送る会

 子ども時代から落語が好き、というよりは落語をはじめとする日本固有の文化や芸能、そしてその雰囲気が大好きだったという柴田さん。さぞかし幼少の時分からまわりの大人たちを楽しませてきたに違いないが、そのへんは現役で県立高校の先生をやってらっしゃる“たしなみ”もあってか、わりにガードが固い。
 「いちばんよく覚えているのが、高校で卒業生を送る会のこと。そのときに白波五人男かなんかの歌舞伎の科白(せりふ)をやって、これがバカうけ。すっかり人前でやる楽しさを知りました」
 大学へ進んでからは、迷うことなく落研(落語研究会)へ入り、勉学方面はそこそこにして、落語修業に励んだという。やがて大学を出て、高校の国語の先生になる。そこでは落研時代に培った話術や客あしらい(生徒あしらい?)のすべが、大いに役立った。
 「日々の授業を通して、話す楽しさや人前でうける楽しさを味わってきたものですから、プロになろうという考えは自然となくなっていった。それよりも好きな噺家さんや未知数の若手噺家さんなんかを呼んで、それを聴く、あるいは発掘していく楽しさに目覚めていったんだと思います」

これまでを振りかえって

 自らが演ずるのではなく、プロの落語家を呼んで一席を設ける。その始まりは「小牧落語を聴く会」であった。より多くの人々に落語を楽しんでもらおうと、柴田さんの先輩、知人らで昭和63年に小牧市で立ち上げたこの会。これまで開催は60数回にも及んでおり、最近は年4回のハイペースで行っている。
 「お客さんの中には常連さんも見えますし、また遠くからわざわざ来てくれる方も多いですよ。噺家さんも東京、大阪に偏ることなく、それぞれのエリアからお呼びしますし、その意味では東西の交流の場にもなってるんじゃないですかねぇ」
 つまり東京、大阪の落語家を同時に招くことによって、東西の橋渡し的な役割も担っているというのだ。こうした落語のための拠点を地元である一宮にもつくり上げたいと考えていたところ、新しい七夕まつりを模索するメンバーらから声がかかった。
 「一宮の七夕まつりを、もう少し別のカタチで盛り上げたい。あるいは文化的な側面から応援したい。そんな気持ちもあって、伝統の七夕まつりに合わせて、この会を始めることにしたのです」
 それが今年で5回目を迎える「一宮たなばた落語ランド」だ。

落語の楽しみとは

 「1回目は、さまざまな世代の市民に落語を楽しんでもらえるよう、1日目は子ども向けの企画、2日目は伝統的な古典落語を、3日目は若い人たちを意識して創作落語と、それぞれ違った楽しみ方ができるよう工夫しました」
 2回目以降も、こうした趣向を積極的にとり入れて、まさに「落語ランド」ならではの企画に努めたという。いちばん、印象的な出来事は?の質問には、
 「やはり去年、桂吉朝さんをお招きしたことですね。桂米朝さんの愛弟子でもある吉朝さんは、一時体調を崩して一線を退いておられたんですが、この落語ランドには2回目から連続して出ていただいたご縁もあって、それで昨年も出演交渉したら、『出ましょう』ということに。主催者である私たちはもちろん、東京や大阪からも問い合わせがきたりして、それはびっくりしましたね」
 昨年夏、この落語ランドで復活を果たしたかにみえた桂吉朝さん。
 「残念なことに病が再発し、結局、落語ランド以後では一つ二つの席に出られただけで、お亡くなりになってしまわれました」
 今年の落語ランドは29日(土)、30日(日)の2日間にわたって開催されるが、30日は桂吉朝一門会ということで、故吉朝さんの4人のお弟子さんが出演予定だ。最後になったが、柴田さんにとっての落語の魅力をうかがった。
 「そうだなあ、やっぱり話の中の空間や登場人物、そんなものが好きなんですねえ。その中にひたっているのが、と〜っても気持ちがいい。ばかばかしい話ほど、いい気持ちになれるんです(笑)」
 ばかばかしい話の中にある落語ならではの気持ちのよさに、ぜひ、みなさんにも出会ってもらいたいと考えているそうだ。

人を訪ねる バックナンバー一覧
い〜ちいまむかし人を訪ねる味のある店プレゼントトップページへ
© 2006 月刊い〜ち編集室 All rights reserved.