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| 席数22の小さい店には、うどん好きのお客が集まる |
今伊勢の街道から少し入ったところに、小さいながらも知る人ぞ知る本格手打ちうどんの店があると聞いたので、訪ねた。
「ええ、機械は一切使わない純粋な手打ちうどんです」と胸を張るのは店主の加藤進さんだ。修業時代から、うどん作りへの情熱を変わらず持ち続け、常においしさを追求している。
「修業期間が9年、そして店を持って今年で15年ですから、うどんを作り始めてからもう24年になりますね」と語る加藤さん。中学を卒業後、弟子入りしたのが稲沢の手打ちうどんの店「田む呂」。そこでみっちりうどん作りのノウハウを学び独立した。
今でも稲沢の本店の店主を父親のように慕う加藤さんは、習ったうどんの味をがんこに守り続けている。
「手打ちうどんを掲げる店は多いですが、粉をこねるところからすべて手でこなすお店は本当に少なくなりました。私たちのように100パーセント手で作るうどんは、今では珍しく、天然記念物みたいなもんですわ(笑)。でもやはり本来の味を出すには、これしかないんですよねぇ」
その日の天候や温度によって、水加減、塩かげん、こね加減も微妙に変えていかなければいけない。ちょうど“いい加減”にうどんを作るには、長年培ってきた技術と勘が必要だ。
加藤さんは、手で握った感覚でその日のうどんの状態を把握し、生地を寝かせる時間も変えていくそうだ。
とにかく試食してみようと、「カレーうどんセット(750円)」と「ちびかつ丼セット(800円)」を注文してみた。
「カレーうどんセット」にはごはんと温かい豆腐が付いている。うどんは、まさに手で打った力強い食感で、カレーの味によくマッチしていた。また具のとり肉も少し焼いてあって、香ばしさが漂う。
「ひと手間かけることで、おいしさを引き出すこともわれわれ食べ物商売には大切なことです」と加藤さんは言う。
また「ちびかつ丼セット」はかつ丼にめん(めんはうどん、そば、中華そば、にゅうめん、きしめんを選べる)が付いていて、ボリュームたっぷり。これなら大食漢の胃袋も満足させてくれる感じだ。
「ウチではランチメニューというのは特にないのですが、ちび丼セットや定食ものも充実していますので、お手ごろな値段でたっぷり召し上がっていただけると思います」
「ちび玉丼セット(700円)」「ちび親子セット(750円)」「ちび天丼セット(850円)」など、お好みのめんとセットにしておなかいっぱい食べられる。
また単品では、「うめぼしうどん(550円)」や具がどーんとたくさん入った月見風の「どんとうどん(700円)」、あげと刻みネギの「いがさうどん(650円)」、十色の具の入った「といろううどん(750円)」など、ネーミングも楽しく珍しいうどんが豊富に用意されている。
まためんだけでなく、つゆにもこだわりを持ち、変わらぬ味を提供している。
「つゆの素である『かえし』は本店秘伝ですので、企業秘密ですが、こんぶやかつおだしにしょうゆやみりんなど、独自の配合でおいしさを出しています。めんもつゆも両方に気を配ってこそ、初めておいしいうどんになるわけですから」
加藤さんは、お客さんの意見も取り入れながら、多くの人に愛される店づくりに余念がない。例えば一人暮らしのお年寄りにも気軽に立ち寄ってもらえるように、半量のうどん(100円引き)をメニューに加えたり、体にやさしい雑炊メニューを作ったりもしている。
また最近ではめっきり少なくなった出前サービスも引き受ける。
「うどんがのびてしまうといけないので、今伊勢、奥町、開明など、近隣の町に限られていますが、風邪で寝込まれたお客さんなどには喜んでいただいています」
地元のお客さんを大切にしながら、昔ながらの手打ちうどんの味を守る「田む呂」の温かい味を楽しんでみてはいかがだろう。