![]() |
|
| 「楽器はみな癒す要素を持っていますが、ライアは特にやさしい楽器だと思います」と語る平岩さん |
「ライア」という名前は知らなくても、映画「千と千尋の神隠し」のエンディングテーマ曲「いつも何度でも」の中に使われた楽器と言えば、「ああ、あれね」とうなずく人も多いだろう。ライアはハープの原形とも言える古い歴史を持つ楽器だ。
今回ご紹介するのは、マイペースでライアの魅力を広めるライア奏者の平岩和子さんだ。
ドイツ語でライア、英語ではリラ、日本語ではたて琴と言われる楽器、ライア…。ライアの歴史は古く、古代ギリシャでは神事やお祭り、また治療などにも用いられ、神聖な楽器として扱われていたそうだ。
「中世に入ってからも、たて琴をかかえた吟遊詩人などは存在したのでしょうが、だんだんハープへと変化して、もとのライアはすたれてしまったようです。それが1920年代にシュタイナー教育の中で使われるようになり、復活したんですね」と平岩さんは、ライアの歴史について語ってくれた。
シュタイナーとは、19世紀から20世紀初頭にかけて活躍した思想家。人智学と呼ばれる哲学を根幹に、教育、農業、医学、薬学、芸術など、さまざまな分野に多大な影響を与えた人だ。特に子どもの成長過程に合わせて独特のカリキュラムで教育を実践するシュタイナー学校は、世界中に広まっており、各国に学校がある。
「テレビでシュタイナー教育についての特集番組があり、その中でライアの存在を知りました。シュタイナー教育には前から関心がありましたので、ライアへの興味も自然にわいてきたんだと思います」
音大を卒業後、平岩さんはピアノ講師として音楽を教えていたが、ライアの存在を知ってからは、ぜひ演奏してみたいという思いが高まっていった。
「教えてくれる人を探していたら、ちょうどタイミングよく、ヨーロッパで音楽療法を学んだ音楽家との出会いがあり、その方にライアを指導してもらいました」
ピアニストとしての素地を生かし、ライアもまたたく間に弾きこなすようになった平岩さん。現在はピアノとライア講師のかたわら、演奏家としてコンサートに参加したり、小中学校やホスピスでの出前コンサートなども行っている。
1920年代にライアをよみがえらせたのは、ドイツ人のローター・ゲルトナーとエルムンド・プラハトという人で、その工法と精神を受け継いだゲルトナー工房は、今でも世界のライア奏者から信頼を得ている。平岩さんのライアもこの工房から取り寄せたもので、アルトライアとソプラノライアを状況に応じて弾いている。
「ひざの上に乗せておなかで支えるように弾くんですが、聴く方も演奏する方も、そのやさしい音色に癒されます」
アルトライアで「主よ人の望みの喜びよ」を弾いてもらったが、取材中にもかかわらず、透明感あふれる美しい音色にすっかりリラックスしてしまった。目の前で演奏しているのに、どこか遠いところから音が流れてくるような、そんな感じだ。
「このライアには35本の弦が張ってあるのですが、指ではじくのではなく、なでるようにして弾いていきます。ピアノですと音の強弱を指で調節していきますよね。強く押さえれば大きな音が出ます。それに比べてライアは、なんというのかな、“呼吸”とか“気”で演奏していくんですね」
平岩さんの演奏は、どこにも力が入っていない感じで、音がやさしい。
「ライアの音色は、お母さんのおなかの中にいたころに聴いている音に似ているとも言われています。だから懐かしい感じがするのかもしれませんね」
持ち運びも楽にできる小さい楽器ということで、いつでもどこでも手軽に弾けるという点も魅力だ。
「山や海に持っていって、自然の中で音色を楽しみたいという人もいらっしゃいますよ」
また意外にとっつきやすいというところも、初心者にはうれしい。
「やればやるほど奥は深いのですが、例えばバイオリンだったら、きれいな音が出るようになるまでには何年もかかります。それに比べるとライアはとりあえず弦をなでれば、すぐに美しい音がでますので、なんとなく弾けているという実感がありますね」
平岩さん自身は、これまではバッハやモーツァルトなどクラシック音楽を中心に演奏してきたが、今後は日本の曲も取り入れ、日本の自然や文化を意識した演奏にチャレンジしていきたいそうだ。
現在、自宅と名古屋の布池教会(東区)で教えているので、ライアの音色に興味のある人、演奏してみたい人は問い合わせてみよう。