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| お店の外観は、ごくごく普通の酒屋さん |
両郷町の交差点から時之島の交差点へ向かう途中、(もちろん時之島の交差点を過ぎて両郷町へ向かってもいい)、“酒”の看板が目に入る。表に自販機などが並ぶごく普通の酒屋さんだが、若い店主がなかなかにユニークな人らしい。
昭和46年の開業ということで酒販店としては比較的新しい「酒のオオギヤ」だが、今の店主である扇間隆幸(せんま たかゆき)さんは2代目。初代のお父さんは岐阜県徳山村の出身ということだ。
「父親が酒の問屋や蔵元などで修業し、その過程で酒販店の免許をとってここで開業したんです。僕も店の跡をやるつもりでいましたから、学校卒業してからすぐにでっち奉公に出ました」
奉公先は大阪の大手小売酒販店。ここには全国から酒屋の跡取り候補の若者15人が集まっていたそうで、出身地も東京、九州など、まさにいろいろ。隆幸さんはそこで3年間、みっちり修業してきた。
「月給は3万円から多くても5万円。朝7時から夜は10時、11時まで働いて、休みは月に2回だけ。体力が勝負ですから、やっぱり途中で棒を折っちゃうような人もいましたね。さいわい僕は学生時代から体動かすのが好きだったし、確かに苦しいことも多かったけど、楽しいこともありました」と振り返る。
そんな隆幸さんは音楽が大好き。ジャマイカの音楽であるレゲエ、その第一人者でもあった故ボブ・マーリィには信仰に近いほどの思い入れがある。
「70年代の終わりから80年代にかけてですかねえ。ちょうどでっち奉公を始めたころですよ、ボブ・マーリィの歌に夢中になって、いつかはジャマイカへ行ってみたいと思っていました」
自然との一体感、人と人の連帯、そして現実を変えようという強烈なメッセージを持つボブ・マーリィの音楽は当時の隆幸さんに、ごく自然に受け入れられるものでもあった。
「約5年前です。新婚旅行も兼ねて、ジャマイカへ10日間ほど行ったんです。アメリカもその他のカリブの島々も一切関係なし。とにかくジャマイカに少しでも長くいたいと思って行ったんですよ」
あこがれのジャマイカで10日間を過ごした隆幸さんは、ボブ・マーリィの音楽に流れる思想や考え方を自身の目で見て、肌で感じることができたという。
さて、そんな隆幸さんの“レゲエ好き”が、酒屋さんという商売に結びついている例を紹介しよう。業務用卸と小売販売を手がけるオオギヤだが、とくに飲食店への卸販売が好調だ。
「バーや居酒屋など新しい店ができますよね。音楽好きな店主やオーナーが結構多くて、とくにレゲエ好きなんてことになると、もう絶対ですね。実際、飲食店の取引先が少しずつ増えているんです」
また店へ来ていた客で、卒業論文でボブ・マーリィを取り上げた学生もいたという。
オオギヤのお店の特長もレポートしておこう。まず焼酎が豊富。隆幸さん自身大の焼酎党で「ブームになるずっと前から大好きでした」と言うほど。
ずらりとならぶ焼酎は約150〜200種類が常時そろっている。卸を通さない蔵元との直取引の銘柄も15種類を数える。また店内には200リットルの木ダルがどーんと置いてあって、これは『ごりょんさん』という福岡の麦焼酎。
「量り売りで、1.8リットルが1,055円。安いしうまい。僕が勧める自信の焼酎です」
焼酎だけでなく、日本酒、ワインも豊富。これらを定温管理する専用のセラーもある。日焼けした若い店主が切り盛りするイキのいい酒屋さんだ。