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| ちゃんこ料理屋さんにはめずらしい洋風の造り |
寒い季節には鍋(なべ)料理がいいよね。水炊きや寄せ鍋、それにキムチ鍋、豆乳鍋なんてのも結構人気みたいだけど、ここはやっぱり、ちゃんこ鍋。現役時代は幕内までいった元関取「嗣子鵬」さんの店が平和町にある。
一宮方面から行って、国道155号線をまっすぐ南下。平和町役場への交差点を過ぎた国道沿いに「嗣志鵬」がある。当初、お話を伺ったのは奥様の田中純代さん。ご主人の修さんは時々ちらりちらりと姿は見かけるのだが、この時点ではまだ“出番待ち”の状態。
「店は、もう11年になります。主人が東京の相撲協会を退職して、すぐこちらへ来て店を始めました」
平和町出身の純代さんに対して、長崎県出身のご主人は15歳で大鵬部屋へ。以後、相撲取りとして10年ほどの現役生活を送った後、31歳まで相撲協会の職員を務めていたという。
お二人のなれ初めは、隣町でもある津島市にて。毎年夏の名古屋場所では、津島神社の参集所が大鵬部屋の宿舎となっていた。
「私の実家が、平和町で喫茶店とガソリンスタンドを経営していまして、そうした関係もあって部屋の宿舎にちゃんこを食べに行ったんです。もう何年も前の話ですよ」
そこで知り合って交際が始まったらしいが、レジ近くに飾ってあるご主人の現役時代の写真は、なかなかに男前。大銀杏(おおいちょう)にまげを結った修さんが、カメラに向かってにっこりほほ笑むステキな写真は、純代さんが婚約時代に写した一枚だということだ。
さて、そんなお話を伺っている間に、注文していたちゃんこが出てきた。取材には3名で訪れたので、豚肉、鳥肉、シーフードの3種類を注文した。これを一つの鍋で煮込む。
ざっと鍋の中身を紹介しよう。
豚、鳥は分かるとして、シーフードは、エビ、タコ、白身魚、ホタテなどだ。で、ベースになっている具は、まず野菜では、白菜、モヤシ、玉ネギ、ニラ、ニンジン、えのき、カボチャなど。さらに、豆腐、糸こん、卵焼き、ナルト、しめじ、油揚げなどがずらりと並ぶ。
ほどなくして煮あがった鍋をつつく。さっぱりとした味の一方では、独特の深いコク。思わず「うまい」の声が出る。具の種類が多いので、あれやこれやと違った味覚、そして舌ざわりや歯ごたえも楽しめる。
「相撲部屋のちゃんこは、もっと味が濃くて甘口なんです。たくさん汗をかくし、塩分や栄養分を補給するためもあると思うんですが、あんまり一般向けじゃないので、うちはあっさり味。年配の方にも喜ばれていますよ」
ランチタイムには、団子セット(うどん、もち、団子)または雑炊がセットになっており、好みで選べる。記者らは団子セットを2人分、雑炊を1人分注文。これらを全部きれいに平らげたら、もう満腹。
思わず「ごっつぁんデス」の言葉が出たことは言うまでもない。
ちゃんこを食べた後、ぼつぼつという感じでご主人が顔を出してくれた。身長、188センチ。現役時代は122キロも体重があったという修さんだが、それでも「相撲取りでは軽量だよ。ほんとはもっと体重付けたかったけどね」。
お二人がそろったところで、「嗣志鵬」のちゃんこの味の秘密をうかがう。
「うちは砂糖や化学調味料は一切なし。甘みもカボチャや玉ネギなどの野菜で出しますし、それにだしも毎日きちんと仕込んでるんですよ」と純代さん。
修さんも「だし? だしは鳥ガラからとってるよ。あと? あとは言えんでしょ。ラーメン屋でもなんでも、その辺のところまでは言えんでしょう(笑)」。
「嗣志鵬」のちゃんこは、なんといってもこのだしが決め手。ベースになる鳥がらスープは、すぐに悪くなるということで、必ず毎日仕込む。“お持ち帰り”などの希望もあるそうだが、だしが悪くなるといけないので、あくまでも店内のみということだ。
訪れるお客さんは近隣の人たちだけでなく、三重県、岐阜県など県外からも多いそうだ。席は4人掛けの座卓が10卓あり、6人掛けのテーブル席が3つ。団体客は50名までが可能だそうで、お正月などの繁忙期はお客さんの要望によっては、すぐ近くの純代さんの実家も店舗に早がわりするらしい。
寒い今の季節に「嗣志鵬」のちゃんこはぴったり。でも、夏場にふうふう言って食べるのもオツなものかも…。