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| 澤木 寛さん |
趣味の世界は奥が深い…とは、よく言われることだが、今回の澤木さんのお話も、ほんとうに奥が深いし、幅も広かった。澤木さんの場合、たこ作りは趣味というよりは、もうライフワークの一つといってもいいほどの凝りようなのだ。
「たまたま新聞を読んでいて、このすぐ近くに昔ながらのたこを作っている人がいることを知り、実際に尋ねて行って教えてもらうようになったんです」
それが現在も師匠である鈴木さん(高田)との出会い。ほんの数年前の出来事だ。以来、澤木さんは「日本の凧の会」に所属し、ほぼ月1回のペースで開かれる全国の大会に足を運ぶとともに、自作のたこ作りに取り組むようになった。
「いろいろな大会に出かけてみて面白いなと思ったのは、それぞれの地域にまったく違うスタイルのたこが残っていたこと。たとえば東京では江戸凧と呼ばれる四角いたこが主流ですし、そのほか、奴(やっこ)や福助などが代表的です。一方、東北なんかでは津軽凧といって、独特の絵模様を描いているところもあります。この地方ではやっぱり、セミ凧とアブ凧。これはもう、どこに行っても珍しがられますね」
尾張地方の独特なたこ文化、それがセミ凧とアブ凧だ。姿カタチは掲載の写真で確認していただくとして、この二つのたこの特徴はなんと言っても、ビーンビーンと鳴る、あの音だ。
「たこを揚げながら、同時に音も楽しめる。裏側につけた弓に弦をはって、それが風で振動して音がするわけです。糸を通じて伝わってくる振動が、なんとも言えず心地いいんですよね」
とは言え、実際に自分でたこを作って、それを持って全国の大会に出かけていく。それには制作する技術が必要だし、手間も暇もかかる。
「もう休みのたびに必ずと言ってもいいほど、どこかへ出かけていきますね。でも私もたこ揚げが大好きですから、一緒についていくんですよ」と、パートナーのとよ子さん。
「まだ現役でサラリーマンをやっていますから、実際、時間はいくらあっても足りません。わずかな暇を見つけては、竹を削ったり模様を描いたり。でも、そんな苦労も好きだからこそです」
そんな澤木さんの悩みの一つが、材料であるすす竹の入手だ。
「すす竹というのは、昔のわらぶき屋根の支柱として、長い年月にわたって使われてきた竹。いろりのすすなどで、表面があめ色になったもので、それだけ時間をかけて乾かした素材。ともかく狂いが少ないし、左右対称を要求されるたこ作りには欠かせない材料です」
実際の入手は竹材の専門店だけでなく、全国津々浦々にいる「日本の凧の会」のメンバーからも。あめ色に光る数少なくなったすす竹を、慈しむように割り、削って、たこの骨組みを仕上げていく。
多彩なたこの世界…。澤木さんのように伝統的なたこ作りに取り組む人もいれば、連凧(凧を連ねて揚げるもの)や、より大きなたこでギネスに挑戦なんて人もいる。またスポーツカイトなどスピード感を競うものなど、実に多様だ。しかも凧だけでなく、糸を自分で紡いだり、糸巻きを自作したり。一方では大会で着るはっぴや小道具にもこだわる。
「今でいうならグッズですか。私もいろいろな小道具を手作りしていますし、また絵をかくのも好きですから、自分なりの文様などの工夫もしています」
実に楽しそうにたこの世界を語る澤木さんだが、すす竹の入手とともにもう一つの悩みが、同好のメンバーが少ないこと。
「全国の大会なんかに行くと、若い人がいっぱい来る。そろいのはっぴにねじり鉢巻なんて女の子のグループもある。でも、この地方はちょっと元気がないかな。細かい手作業から外でのたこ揚げまで、いろいろな楽しみ方ができると思うし、もう少し仲間が増えるといいなと思っています」
ちなみに11月2日(日)午前10時から138タワーパーク広場で、凧の会によるデモンストレーションがある。もちろん参加は自由。親子で出かけてみても楽しいのではないだろうか。