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味のある店2003年1月号・8号 - 人を訪ねる
木工 土屋保徳 さん
趣味はボクシング観戦。矢沢の永チャンが大好きという若き職人、土屋さん(33歳)
趣味はボクシング観戦.。矢沢の永チャンが大好きという若き職人、土屋さん(33歳)
〒491-0365
愛知県一宮市萩原町西御堂879
電話・FAX 0586-68-3505
http://home.owari.ne.jp/~walkon/

柱、床板などの古材を大事に使いながら
一つひとつ手作りで家具を制作します

 本紙、「チューネン断定団」を執筆中のホシさんからの紹介。「萩原町で古材を使って家具を作っている土屋君ってのがいるんですわ」と聞いたので、行ってみた。家具を作るというだけなら普通だが、あえて古材を使うというところがニクい。そのニクさに迫ってみた。

木工へ至るまでの道のり 

 土屋さんの略歴をざっと紹介。高校卒業後、職業訓練校で工業デザインを勉強。その後、埼玉の靴屋さんで型紙取りの仕事に従事。しかし実際にカタチのあるものを作りたい、木工をやってみたいと思い、豊橋のいすメーカーへ就職。
 「会社へ入って驚いた。自分はやる気満々なのに、職場はなんか陰うつ。みんなやる気がない。自分なりにバリバリやってきたんだけど、ある日とうとうキレれましてね」
 聞けば、納期が迫っていて必死で仕事する土屋さんの後ろで、直属の部長がワープロ仕事。何やっているのかと見たら「今度の釣りクラブは…」と、趣味の世界で遊んでいる。
 さっさと見切りをつけ、次に入ったのが工業デザイン事務所。工業デザインと名前は立派だが、実際は、組み立て、納品などをメインとした倉庫業みたいなもの。これまた失礼して、海部郡にあった木工の工場へ。
 「あんまりちょくちょく仕事変わるんで、とりあえず両親を安心させたいというのもありました。ここはマンション用の家具を作る工場で、来る日も来る日も、同じ物ばかり、何百、何千という数の棚なんかを作るわけです。飽きてきますよね」
 というわけで、いよいよ独立。しかし仕事がすぐあるわけではない。知人からもらう機械の図面引きのバイトをしながら、自分が作った家具の個展を開いたり、グループ展に参加したりしていたという。

木工仕事は研ぎが命 

 「なんだかんだとありましたが、やはり最初のいす屋さんの仕事と、最後の木工工場での家具作りの仕事が役立ちました。その工場には、一人だけすごく腕のいい先輩がいたんです。でも他人の仕事には、厳しい人で。いつかは、この人を追い越そうと思い、刃物研ぎに精を出したんです」
 土屋さんによれば、 木工仕事は研ぎが命 。道具をきちんと研いでないと、仕上げも汚い。きちんと研いだ道具を使うと、仕上げはばっちり。だから来る日も来る日も、刃物研ぎの練習をしたのだそうだ。そうすると、ある日コツがつかめた。コツがつかめると、地味な仕事が楽しくなってくる。工場を退職するころには、例の厳しい先輩から合格点をもらったそうで、刃物の研ぎには絶対の自信を持っている。
 そんな当時の努力もあって、今では土屋さんの作る家具はすべてカンナだけで仕上げる。サンドぺーパーなどは一切使わない。

ほとんどの仕事に古材を利用 

 土屋さんの仕事は、机、いす、食器棚、座卓などの家具一般から、店舗での陳列棚、さらには和食の店の内外装まで、実に幅広い。依頼主は、知り合いの設計事務所や、個別に問い合わせがあったお客さんなどだが、冒頭にも述べたとおり、ほとんどを古材から作るという。
 「僕の仕事では、7割ぐらいは古材を使いますね。古材のいい点は、まず何十年にもわたって乾燥させてあるから、家具に仕立てた時の狂いがほとんどない。新材のように色あせも少ないし、独特の深みがあるんです。それに今では手に入らないような、とてもぜいたくな素材も使えますからね」
 というわけで、材料の調達はもっぱら解体業者から。古い家を取り壊すという情報が入ると早速出かけていって、棟木や柱、床板、引き戸にいたるまで、使えそうな部分にガムテープでマーキング。解体作業でいためないようにするためだ。
 「そうやって仕入れてきた柱なんかを、実際に使えるようにするのがひと苦労なんです。クギ跡やほぞ穴、それにひび割れなどがあるので、それらをきれいにくり抜いて、別の木をはめ込んでカンナをかける。砂利などが食い込んでいるといけないので、水洗いも入念にします。結構手間がかかるんで、みんなあまりやりたがらないんです」

古材へのこだわりと考え方 

 土屋さんのお話を伺っていると、古材への思いがじわじわと伝わってくる。たとえば古家を取り壊して、新築するお客さんの場合。古家に利用してあった柱などを使って、家具にしてほしいと依頼されたりする。
 「お客さんのところへ行って、いろいろ話を聞いてくるんですよ。この柱はおじいちゃんが大工さんに頼んで、特別に取り寄せたものだとか、この戸板は、暑い日も寒い日も、毎日せっせと磨いた板でねぇとか。そんな時は材料だけでなく、お客さんの思いも一緒に預かるような気持ちになりますね」
 最後になったが、土屋さんに家具をお願いするとしたら? と質問してみた。
 「やりますよ。あ、お金ですか? そうですね。たとえば机だったら、以前は1平方メートル10万円ぐらいの目安でやっていました。でも、僕としては、はじめにお客さんに予算を言ってもらって、そこから始める方が助かります。作る側にとってみれば、予算はもちろん、作品の出来も含めて、お客さんに気に入って使ってもらえるのが一番ですからね」

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