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味のある店2002年9月号・4号 - 人を訪ねる
写真家 夫馬勲 さん
撮影旅行の思い出を語る夫馬さん
撮影旅行の思い出を語る夫馬さん
〒491-0804
愛知県一宮市千秋町佐野郷浦102
Tel 0586-76-3523

やっぱり自分の主張がないと、いい写真は撮れないよね

 好きなことをやって好きなように生きている人は年を取らない…。なんていう言葉があるのかどうかは知らないが、初めて会ったとき63歳と聞いて驚いた。そしてお話を伺っていたら、その奥行きの深さに、ますます引き込まれていった。千秋町で写真館を営むかたわら、専門学校などで写真家として教べんもとる夫馬勲さんである。

これなら自分でもできるんじゃないかと 

 6人兄弟の3番目。中卒で働く人が多かった当時、夫馬さんもまた卒業後、紙問屋にでっち奉公に入った。その後、デザイン関連の仕事がしたくて版下屋さんに勤務。その間、さまざまな資格取得にも挑戦したかったが、中卒では受験資格がないものが多い。そこで、学歴を問わない世界で何か仕事ができないものかと考えていた。
 「ある日、本屋で写真の専門誌を見ていたら、ひらめいたんだよ。いろいろな写真の賞を取っている作品を見て、これなら自分でもできるんじゃないかと」
 そこで一念発起。苦労して3万円の中古カメラを買う。自分で撮影する。雑誌などを参考にして現像、プリントなども独学で覚える。20歳で写真スタジオに就職。いわゆる現像などの暗室作業は、誰よりも早くうまくできる腕を身につけた。
 「だけど人に使われるのがいやでね。その後、いろんな仕事をしながら東京から神戸あたりまで、ま、今でいえばフリーターをやってふらふらしてたんだ」
 郷里に帰ったのが20代半ば。借金して写真館を建てた。結婚もした。そのころから本格的に写真をやる気になって、さまざまなコンテストに出品。次々と賞を取るまでになる。
 「風景や祭りなんてのは、あんまり面白くない。自分にしか撮れないものをと思って、日本中を駆け巡った。長崎の佐世保にアメリカの空母が入る。学生たちが反対運動をやると聞けば、現場に駆けつける。まあ、ドキュメントが中心だったけど、おかげでさまざまなグラフ雑誌や週刊誌からも仕事の依頼が来るようになって、まあまあ生活できていくようにはなったかな」

NHKより前にシルクロード撮影の旅 

 行動するフリーのカメラマンの夫馬さん。当然、海外へと足を向けることも増えていった。最初に行ったのは韓国。当時の大統領選挙の模様を撮影に行ったのだが、まだまだ撮影禁止の場所も多かった。
 「選挙の模様を庶民の目でとらえようという狙いだったんだけど、軍の施設を勝手に撮影したという疑いがかかってね。結局疑いは晴れたんだけど、まあ初めてのことだし、びっくりしたわなあ」
 こうして海外での仕事も経験するようになった夫馬さん。年代的には30歳代。心身ともに充実期にあった夫馬さんは、友人2人とシルクロード撮影の旅を敢行する。その時、奥さんは初めての子どもを妊娠中。
 「シルクロードといえば中国。普通は中国から入ってヨーロッパを目指すんだけど、当時は中国に入れなかった。そこでヨーロッパで車を買って、東へ向かうコースを選んだんだ」
 同行の友人は、年代も似通った僧りょと彫刻家。ドイツでワーゲンのデリバリーバンを手に入れた3人は、東欧、トルコ、中東を経てインドまで約3カ月の旅に出発した。NHKが喜多郎(音楽家)のシンセサイザーにのせて、あの“シルクロード・ブーム”を巻き起こす、はるか以前のこと。
 「まあ、いろんなことがあったよ。シリアの砂漠ではオオカミに襲われそうになるし、もちろん泥棒なんかもいたるところにいた。国境と国境との間に何10キロにもおよぶ空白地帯なんかあって、そんな所は警察はおろか、法律もなにもあったもんじゃないからね」
 夫馬さんたちの、このシルクロード旅行の模様は当時NHKでも取り上げられ、その都度出演しては武勇伝を語ったという。

撮影の極意は自分の目 

 人のやらないことに挑戦する、自分なりのスタイルを追求する…。こうした夫馬さんの姿勢は、実は写真に取り組む場合も同じ。目の前にある被写体を漫然と撮影するのではなく、そこに自分なりの視点、考え方、感動がなければならないと言うのだ。
 「よく写真教室で教えていると、めずらしい山の風景や花々、そうしたものを写して満足している人たちがいますが、やはり自分なりの主張がないと“いい写真”とは言えない。こういうニュアンスを指導することは、実はいちばんむつかしいんだけどね」
 写真館を営みながら専門学校や各種教室などで教える夫馬さんだが、最近では生徒たちを連れて年2回の海外撮影ツアーにも出かける。
 「中国とインドへ毎年1回ずつ行くんだけどね、やはりカメラを構えて写真を撮ってくるのには、それなりの度胸がいるんだよ。その辺は各人が自分自身で経験して、身に付けていかなきゃならないこと。今年の秋はインドのラジャスターン州で祭りがあって、そこでラクダ市が開かれるんだ。砂漠の中でテントに泊り込んで撮影するんだけど、一緒に行く?」
 実にフットワークも軽やかな夫馬さん。おつれ合いのたみ子さんは、これまでもっぱら留守番役。「撮影旅行のことは、あとで聞けば恐ろしいことばっかり」。それでも夫馬さんを評して「まじめに仕事をするし、それになにより純真な人だわね」

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