![]() |
|
| 「忙しいけれど、何事も楽しみながら取り組んでいる」と言う野田さん |
一宮市今伊勢町馬寄で和菓子店を営む野田満男さんは、実に多くの肩書きを持つ。中部地区の和菓子店約300店によって組織される和菓子研究団体「名和会」の技術部長として活躍するかたわら、「全日本和菓子展」での「日本伝統工芸賞」や、「金沢菓子博」での「内閣総理大臣杯」など、輝かしい受賞歴も持つ、いわば和菓子づくりの達人だ。
地元、一宮では和菓子づくりの講師として、あちらこちらの教室にひっぱりだこ。またさまざまなボランティア活動も引き受け、地域への貢献大だが、ご本人は「頼まれるままに引き受けているうちに、こんな忙しい身の上になっていた」と、いたって肩の力の抜けている人。楽しい話をたくさん語ってくれた。
ここ数年、一宮スポーツ文化センターの市民講座として、また各公民館活動や女性の会などで「和菓子教室」を開くところが増えており、野田さんは講師として忙しい日々を送っている。
「みなさん、楽しんで取り組んでくださいますので、教える側も楽しいですね。楽しむことが、上達の一歩。でもね、材料だけは、きちんと計ってつくってくださいとお願いしているんですよ」
和菓子の微妙な味わいを出すために、長年試行錯誤を重ねてきた野田さんは、材料のおいしさを引き出す分量を熟知している。教室のレシピもその分量で作成しているので、これだけは守ってほしいと語る。
「和菓子には、日本人の繊細な季節感がよく表れています。旬のものを使い、四季折々の味わいを感じられるところが、なんとも奥が深いですね」
教室では、ただ技術を伝えるだけでなく、和菓子がかもし出す伝統的な美しさまでも感じてもらえるように心を配っている。たとえば季節ごとにメニューを変え、ゆっくりとわかりやすく説明するなど、野田さんならではの工夫が人気を呼んでいるようだ。
「名和会」の技術部長、和菓子教室の講師以外にも、調理師会の地区長、民生委員、岐阜の高校の野球部後援会長など、肩書きは数え上げたら、きりがない。
「どうしてだかねぇ。一つ引き受けると、どんどんいろんな役が回って来ちゃって…(笑)。でも、地域の役に立つことをしていれば、結局自分にかえってくる気がします」
出会った人たちとの交流は、視野を大きく広げ、それが和菓子づくりという自分の本業にも生かされていると、野田さんは信じている。
「それとね、私、若い人たちを応援していきたいという気持ちがあるのね。次代を担う若い世代を育てていくことは、われわれの大切な仕事でもありますからね」
そんな思いから、中高生の授業の一貫として行われる「職業体験(インターンシップ)」の受入れにも熱心だ。毎年、夏になると中学生と高校生が数十人「野田屋菓子舗」で、職業体験をする。
「『でっち奉公』なんて言葉も知らない今の子たちに、昔のしきたりを教えても意味がないでしょ。和菓子の製造販売について、きちんと順序立てて教えれば、彼らはちゃんと仕事を覚えてくれます」
若い人たちを教えることで、自分もまたエネルギーをもらえるので、指導は楽しいと野田さんは言う。
地域活動に忙しい野田さんだが、職人としての腕前もスゴイ。
平成六年の金沢博で「内閣総理大臣杯」を受賞した「赤飯まんじゅう」は、桜をあしらったところに野田さんらしさが表れている。また名物「いちご大福」は、遠く県外から買いに来る人も少なくないという。取材中に記者も試食したが、甘味が抑えてあり、おいしかった。特に「赤飯まんじゅう」は絶品。ほんのりピンクの赤飯のもっちりした食感と、塩漬けされた桜の花びらの味と香りが絶妙にマッチしていた。
「アズキやきな粉などを多用する和菓子は、健康にもいいと最近話題になっていますよね。私もなるべく素材の自然な味を引き出すことを心がけています」
実は植物を育てることも大好きな野田さんは、店で作る「スィートポテト」に使うサツマイモなどを自家栽培している。お店の裏には、野田さん自慢のさまざまな植物が生い茂り、ナシやモモの実が枝もたわわに実っている。
「ブルーベリーやクランベリーだって育てていますよ」と、木の実の話を始めた野田さんの笑顔は、子どものように輝いている。忙しい時間を縫っての「植物育て」が、どうやら野田さんの元気のもとになっているようだ。