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| 木のぬくもりが感じのいい「スプーンフル」 |
木曽川町に、おしゃれな店があると聞いて出かけたその店は、ちょいとわかりにくい場所にあった。
「そうなんですよ。わかりにくいから、あんまり知られてないみたい。だからお客さんもあんまり来ない(笑)」とオーナーの田中肇さん。
はてさて、その「スプーンフル」とは、いかなるお店なのか。早速入ってみよう。
緑の木々が茂るなか、白と茶色を基調にしたウッディな建物は、いかにも落ち着いた雰囲気。表には黒板が置いてあり、「ランチメニュー」が細かく書いてある。
「ということは、お昼ご飯の食べられるお店なんだ」と納得し、中へ入ると、床は板張りで、天井は吹き抜け。全体に木のぬくもりが感じられ、心地のいい空間が広がっている。
「実は、私、繊維関係の会社を経営していたのですが、こういう時代ですから、何か新しいことを始めたいと思いまして、2年半ほど前にこの店をオープンしました」と田中さん。
「スプーンフル」という店名は、1970年代に一世を風靡(ふうび)したギタリスト、エリック・クラプトン率いるバンド「クリーム」のヒット曲にちなんで付けた。
「60年後半から70年代は、私にとってまさに青春時代。そのころ流行した洋楽は、ほとんど聞いていましたね」
古くはウォーカーブラザーズ、そして大好きなエリック・クラプトン、ジョージ・ハリスン、ボブ・ディラン、エルトン・ジョンなど、当時来日したアーチストのコンサートには必ず足を運んだという田中さんは、そのころ買い集めたレコードも大切に保存している。
「どうせ新しいことを始めるなら、自分の好きな音楽をかけながら、楽しんでやろうと思い、こういうお店を考えたんです」
60年代、70年代のロックは、世代を越えてお客さんにも好評だ。
「40代後半から50代の人たちには懐かしい音楽として、また若い世代の人たちには新鮮な音楽として受け入れられているのでは」と田中さんは語る。
そんな音楽好きの田中さんは、料理の腕もなかなかのものらしい。
「自分で言うのもナンですが、やり出すと何事も追求してしまうタチなんです。店を始める前は料理の りの字 も知りませんでしたが、クッキングスクールにも通って本格的に始めたら、これが結構面白くてね」
ランチはハンバーグ、コロッケ、から揚げの3種の定食と、パスタランチ。いずれもコーヒー付きで800円。
「スパイスをあれこれ調合して独自に研究したカレー。やっといい味が出せるようになったので、これからメニューに加えていく予定です」
ハンバーグも、コロッケも、すべて手づくり。週に何度も通ってくるお客さんも少なくない。
「私がつくるコロッケを食べに、毎週土曜日、必ず来てくれる80歳のおばあちゃんがいらっしゃるんですよ。コロッケって結構めんどうだから、もうやめようかなとも思いましたが、そのおばあちゃんのことを思うと、やめられなくなっちゃった。おばあちゃんが来てくれる限り、コロッケ定食はメニューからはずせないですね」
近所の人たちにとってもオアシスのような存在でありたいと願う田中さんは、「地元のお客さんに愛されるお店にしたい。いつもお客さんの声に耳を傾け、いろいろな要望を店づくりに反映させていきたいですね」と言う。
『スプーンフル』では、ランチタイムだけでなく、夜の部もにぎやか。くつろげる空間にさまざまなロックが流れ、おいしいお酒、料理が楽しめるそうだ。
「ビール、バーボンを中心に、カクテルも2〜30種類ご用意できます。またピザ、パスタ、肉料理、魚料理など、お酒がよりおいしくなる料理もお出ししていますよ」
もし機会があれば「生演奏を始めてもいいかな」と今後の抱負を語る田中さん。地元、木曽川町に根ざしながら、個性ある店づくりに取り組んでいる。